一人一人の可能性





 たこ焼きを隼人の奢りで食べた後は、

 いつも通りみんなで遊んで解散。

 この時。つっちーが本屋に寄ってくって言ってて、つっちーとはそこで別れた。

 あ。隼人と竜はビリヤードやってから帰るって言ってたっけ……





   〜一人一人の可能性〜





「つっちーが自宅謹慎……?」

「………正式な処分が下るのは理事長が帰ってきてからだそうだ」




 ヤンクミの言葉を疑った。

 たぶん、みんなも同じだと思う。


 だって………なんで?




「処分?」




 竜がヤンクミに聞き返してた。

 私はまだ頭の中が整理できていなくて聞き返すことすら出来なかった。




「まさか退学とか?」

「女の子と遊んでただけだろ?」




 浩介と啓太もかなり驚いている。

 教室には“そんな事あり得ねぇよ”って言葉ばかり出てきていた。


 そんな中、隼人と竜が目を合わせてるのを見逃さなかった。




「……隼人と竜、何か知ってるの?」




 私が二人に聞くと、竜が答えてくれた。




……。実は昨日つっちー見かけたんだよ」

「え?」

「あの学校見学会に来てた女の子を一緒に遊んでたっぽい」




 次に答えてくれたのは隼人。




「そう……なの?」

「あぁ。」

「……ふーーん。……遊んでただけなのに退学とかあり得るの?」

「知らねぇ」

「……………」




 ただ遊んでただけなのに退学は無いでしょ……。

 た……ぶ………ん。


 隼人は“知らない”って言うし、竜は黙り込んじゃうし……。

 ってことは、退学の可能性もあるって事だよね……?

 ……どうしよう…………


 私がつっちーに何か出来ることってないのかなぁ……?




































「自宅謹慎の癖にこんな所で何やってんだ?」




 ヤンクミと一緒につっちーの家に行ったらつっちーは家に帰ってきていないらしい。

 それを聞いてヤンクミは“つっちーを探しに行ってくる”って言ってたからヤンクミについてきた。

 つっつーを探してみると、案外簡単なところにいた。


 いつもの川原。


 つっちーはたった一人で何処か遠くを見つめていた。




「お前の家に行ったら留守だったから」

「んだよ……こんなとこまでついてくんなよ。センコーなんかうぜぇんだよ」




 なんか……2年前の自分を見てるみたいだなぁ。

 は土屋を見てそう思っていた。



 あの頃は仲間しか信じることが出来なかったから……

 今のつっちーみたいに……

 先生なんて生徒のことなんか表面上にしか気にしないと思ってたから……




「はぁ。………、お前まで…………」

「……だって心配だし」




 つっちーはため息をついて立ち上がった。

 で、歩いてく。

 そんなつっちーにヤンクミが静かに問い掛けた。




「土屋……何を隠してるんだ?」

「何も隠してねぇよっ!!
 ……石川に昔の仕返ししてやろうと思っただけだよ。
 あのヤロー中学の時はずっと俺のことを目の敵にしやがって
 いつも頭ごなしに怒鳴って俺の話なんか聞こうともしねぇ。今も昔と同じだよ何も変わってねぇじゃねぇかよ。
 あの子の事………
 俺、なんかあの子の気持ち、分かったような気がしたんだ」




 つっちーの様子がやっぱりおかしい。

 絶対に何か隠してるんだ。


 ヤンクミも私と同じ事を思ったみたいで……




「お前……庇ってるんじゃないのか?」

「そんなんじゃねぇよ!」

「もうすぐ卒業だってーのに退学になってもいいのか?」

「……俺はあの子と違って落ちこぼれだし
 将来の夢も希望もねぇし
 かといって別に進路が決まってるわけでもねぇしよ
 退学になろうが……俺には痛くもかゆくもねぇんだよ」

あの子には将来があってお前にはねぇからどうなったっていいっ言うのか?

「………悪ぃかよ」

悪いに決まってんだろ?!そんなの自分の人生見つけようとしない言い訳じゃねぇかよ!!」

「……………」

「今、夢や希望がないからってこれから先も同じだと考えるな!
 あの子に将来があるようにお前にもあるんだよ!!」

「……たかが知れてるよ」

「“たかが”じゃねぇ!!」

「あの子に比べりゃ“たかが”だろ?!」

なんで人と比べなきゃいけないんだ?
 お前の将来も……あの子の将来も同じだけ重さがあるんだよ!
 同じだけの可能性があるんだよ!!」

「………そんなもん……きれい事じゃねぇかよ……」




 私はヤンクミとつっちーの話を聞いてる事しかできなかった。

 ……本当に、今のつっちーは2年前の私だ。


 つっちーが歩き出す。

 何処に行く気なのかわからないけど……。




「待って。つっちー……」




 私がつっちーに向かって呼びかけたら

 つっちーは止まって振り向いてくれた。




「……?」

「つっちーには……大きな可能性を持った将来があるよ」

「お前まできれい事言うのかよ」

「きれい事って思われてもいいっ!!
 でも………私はそう信じてるの。
 つっちーにも、私にも、隼人や竜、啓太や浩介にだって大きな可能性を秘めた将来がある……って
 ………私はそう信じてる」




 “誰にでも大きな可能性を秘めた将来がある”って

 私はそう教えて貰ったの……

 慎達と学校にいたとき、ヤンクミに教えて貰った……




「……………」




 私がそこまで言い終えると、

 つっちーはまた振り返って、何処かに向かって歩き出してしまった。


 その時、隣でヤンクミが


 “私は絶対にお前を退学になんかさせないからな”


 何かを決意した目でそう言っていた。




































 次の日。

 今日もつっちーも机だけが空の状態だった。


 みんなも元気がない。

 いつもはざわついてる授業だって今日は静かだ……。

 誰も話さないから……。


 私はいつも参加しているヤンクミの授業。

 でも………

 今日は勉強する気になれない

 ヤンクミの声は頭を通り過ぎるだけで入ってはいかなかった




































 そんな調子で1日が終わってしまった。

 ……明日はとうとうつっちーの処分が決まる日………




「明日だろ?つっちーの処分が決まるのって……」




 浩介も同じ事を考えてたみたいだ。

 たぶん、他のみんなも同じだと思うけど……




「まじで退学なのかな?」

「なんとかなんねぇのかな?」

「………山口?何やってんだ?あいつ……」




 啓太、隼人、竜の順で話してる。

 竜が最後に言った言葉に私達5人は竜の見てる方向に視線を集めた。



 そこで私達が見たのは……












『宮崎さんお願いっ!!土屋を助けたいの!
 話を聞いて!………行かないで!待って!!』











 ヤンクミが宮崎さんに必死で頼んでる姿。


 少なくとも、私は心を打たれた。

 きっと……みんなも同じ………


 だってこんな先生他にいないもん……




































 今日はつっちーの処分が決まる日。

 私達はいつもより早く起きてつっちーに会いに来た。


 つっちーに知って貰いたかったから……

 どれだけヤンクミが心配してるのか……

 どれだけつっちーの事を思ってくれてるのか……




「よっ、つっちー」

「おはよっ!!」

「……顔かせよ」




 何か考え事をしてるような顔のつっちーの目の前で、

 私達は止まって竜、私、隼人の順で話しかけた。


 ……隼人、“顔かせよ”ってなんか怖いよ?

 もっと違う言い方無かったの………?



































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あとがき

    なんか……シリアスなのか?これ……
    私服つっちー格好良かったなぁ(笑
    てか、今回もあんまり話が続いてくれなかったよ……(誰のせいだよ



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