ヤンクミの思い





 私達がつっちーを連れてきた場所

 それは宮崎さんの家

 
 私達がつっちーに見せたかったもの

 それはヤンクミの必死になっている姿




   〜ヤンクミの思い〜















『お願いします。お嬢さんに会わせてください。
 もう時間がないんです。お願いします!!』










 ヤンクミは必死になって宮崎さんのお母さんに頭を下げている。

 つっちーの為に……。





「朝っぱらから超迷惑」

「本当。珍しいセンコーだよな」

「……ま、ちょっとうぜーけど」

「いや、かなりだろ。
 ………でも、悪くねぇじゃん」















『お願いします!お願いします!!』















 つっちーにも伝わった?

 ヤンクミの思い。

 どれだけ私達のことを思ってくれてるのか、心配してくれているのか



 見ていたら、宮崎さんのお母さんは家の中に入っていってしまった。

 ヤンクミは悔しそうにとぼとぼとその場を後にした。




































「どうするんだよ……」





 静かな教室に隼人の声が響いた。

 あともうちょっとで、つっちーの処分が言いわたされる。

 だから……今つっちーの机には誰も座ってない。





「どうするったってなぁ」





 浩介もいつもよりかなり元気がない。

 まぁ、みんな元気ないんだけど。



 つっちーの処分が言いわたされるのを黙って見ていたくなんか無い。

 黙っていたら、またあの時と同じになっちゃう。

 ……なんとかしなきゃ!!




「私、ちょっと行ってくる」

「はぁ?!、お前どこに……」

「お、おい!ちょ、待てって!!」

?!」




 竜と浩介、啓太がなにか叫んでいた。

 でもそんなの聞いてる暇なんて無い。




































 は朝来た場所にもう一回訪れた。

 玄関から人が出てくるのを見ては叫ぶ。




「宮崎さん!!」

「?!」




 なんで逃げるの……?

 今、つっちーが……




「お願い!少しでも良いから話を聞いて」

「…………」




 私から走って逃げた宮崎さんは足を止めた。

 話を聞いてくれるらしい。




「お願い。
 私、つっちーを助けたいの。みんなで……卒業したいの
 だから………お願い。勇気がいると思うけど……本当のこと言って?
 つっちーを助けられるのは宮崎さんしかいないのよ?」




 宮崎さんは俯いたまま何も言わなかった。

 私はこれ以上は何も言えない。


 これ以上のことは何も出来ない。




「私……。助けたいんです」

「?!宮崎さん……?」

「本当は……ずっと本当のことを言いたかったんです。
 でも…………」




 正直、宮崎さんの言葉には驚いた。

 でも、

 宮崎さんも私と同じでつっちーを助けたかったんだ。

 そう考えたらなんだか嬉しくなってしまった。




「私がいる」

「ぇ………?」

「私が一緒にいてあげる。だから……ね?勇気だそ?」

「………はいっ!」




 私が俯いたままの宮崎さんにのぞき込んでそう言ったら

 宮崎さんは少し間をおいてからだったけど、本当のことを言う決意をしてくれたらしい。


 私は急いで宮崎さんと一緒に黒銀学園へと向かった。




































 息を切らした宮崎さんと私は3D教室に辿り着いた。




「みんな!ごめん!!遅くなった」

「な?!、お前今までどこに……」




 隼人がこっちに向かって走ってきた。

 心配してくれているのだろうか?


 ……今はそれどころではない。




「宮崎さんがね……」

「?!あ、君……」




 隼人が私の後ろにいた宮崎さんに気付いた。

 宮崎さんは隼人を見ると、ペコリと頭を下げた。




「それより早く行こう!」

「「「「「お、おう!!」」」」」




 いつの間にか私達の周りには3D全員が集まってきていた。

 みんなでつっちーの所へ急ぐ。



































 部屋の中からはいろいろ声が聞こえてくる。

 なんて言ってるかよく聞き取れなくてみんなでドアの方に押し寄せた。









 ―――――バンッ!!









 みんなの体重がドアにかかったわけで……

 それはそれはかなりの勢いでドアが開いてしまった。




「お、お前等?!なにしてるんだ?!」




 教頭が怒ってるっぽいなぁ〜

 ま、確かに怒るだろうけど……




「悪ぃ。なんかじっとしてらんなくってさ」




 クラスの代表として隼人が教頭の問いに答えた。

 その時私はあの人、理事長と目が合った。

 でも、互いに何も言わない。


 私は何事も無かったかのように宮崎さんを連れて前に出る。




「あ、あの〜〜」




 聞いた感じでは弱々しそうな声。

 それをを聞いて、部屋にいる先生方がこっちを向く。




「宮崎?!」

「……ごめんなさい!土屋さんは何も悪くないんです!!」




 宮崎さんの言葉に教員全員が不思議そうな顔をした。




「私のせいなんです!!」

「もういいって……」




 宮崎さんにつっちーが言う。

 でも、もう宮崎さんは決意したんだから止まることはない。


 私が握ってあげた手。

 宮崎さんの手に力が入った。

 それに、わずかに震えてもいた。

 私は耳元で“大丈夫、宮崎さんなら出来るから”そう言った。




「私、万引きしようとしたんです。
 ……もう勉強なんかしたくない。受験なんかどうでもいい。
 そんなことを考えていたら……。
 土屋さんが止めてくれなければやっていました!」

「土屋が止めた……?!」

「なんでそんな嘘をつくんだ?!」

「嘘じゃありません!!」




 なに?この先生……。

 宮崎さんのこと何にも信じなくて……

 宮崎さんのことを何も考えて無くて……

 本当のことを言うのにどれだけ勇気がいるのかって事を分かってない。




「土屋に言えっていわれたのか?!」

まだわかんないのか?!




 あの石川先生の言葉を遮るようにヤンクミが叫んだ。




「この子がどんな思いで本当のことを話したのか、なんにもわかんないのか?!
 自分の生徒のこともっと見てやったらどうなんだ?もっと話を聞いてやったらどうなんだよ!」

「あんたこそ………土屋のこと、どれだけ見てると言うんだ?担任になってまだ日も浅いくせに……!!」




 微妙に石川先生の声が震えている。

 きっとヤンクミに気迫負けしたのだろう……。




「時間じゃありませんよ……
 例え、一時間でもちゃんと見ようと思えば生徒のことは分かります。

 土屋は………短期で喧嘩っぱやくてお調子者で、度の過ぎたいたずらもやります。
 でもクラス一のムードメーカーで言葉使いはなってないけど、
 ちゃんと“ご馳走様”って大事なことが言える奴なんです。

 自分のやったことに一切言い訳しないで責任を潔く持つ奴なんです。

 こいつには私の知らない言い所や悪い所があるはずなんです。

 こいつらだってそうです。
 ずるい所、優しい所、だらしない所……
 みんないろんな面を持ってるんですよ。
 だから私はこいつらのこともっともっと知りたいんです。
 私はこれからもこいつらの事見続けていきたいんです。」




 ヤンクミは凄い。

“何が?”って言われるとハッキリとは言えないけど、

 言葉では言い表せない凄さがヤンクミにはある。



 ちょっと感動的なシーンの中、白鳥先生が口を開いた。




「あのー。土屋君の処分は無しってことじゃないですか?」

「そ、そうですよ!!だって土屋は万引き止めたんですよ!!
 む、寧ろ誉めてやんないとっ!!」




 あの人が立ち上がった。

 全員の視線があの人に集まる。




「そう言うことに………なりますか。」

「あ、有り難う御座います!!」




 そう言ってヤンクミは頭を下げた。

 つっちーも……。


 その後、ちょっと間があったけど、

 みんなが“やったぁーー!!”とか叫んだ。


 私も嬉しくなってつっちーに飛びついた。




「やったね!!つっちー!!」

「おぉお?!?!」

「やったやったっ!!」




 小さな子供のように土屋に飛びついてきたを、土屋も抱きしめかえした。

 身長差がかなりある為、土屋の腕の中にすっぽりとは収まっていた。




「あぁーー!!つっちー何やってんだよ!!」

「へっへ〜〜ん」

「おい、てめぇ………」

「いいだろーー?はっやっと君??」

「………ちっ」




 く、苦しい………。

 そう言いたいだったが、土屋が強く抱きしめていた為喋ることが出来なかった。




「おい離せよ」

「竜?……竜も羨ましいんだろ〜?」

「………苦しそうじゃん」

「え………?」




 竜に言われて土屋は腕の力を抜いた。




「っはーー。………死ぬかと思った……」

「あ、悪ぃ」

「へ?あ、あぁ大丈夫大丈夫っ!
 あ。竜ありがとね!!」

「…………あぁ」




 その後、宮崎さんは私の可愛い可愛い後輩になってくれることを約束してくれた!!

 竜は“違ぇだろ”とか横で言ってたけど………



































 私達は教室に戻ってきてつっちーを真ん中に話していた。

 最初につっちーに話しかけたのは浩介だ。



「なぁ、つっちーよ。もしかしてさ、
 あの子に惚れちゃったんじゃないの??」




 その一言に教室内が五月蠅くなった。

 “おぉーー”とか“きゃーー”とか………


 “きゃーー”っておかしくない??

 まぁ、いっか。



「馬鹿言ってんなって!!中学生なんてガキじゃねぇかよ。
 俺のタイプは年上の女!……あ。一人だけ例外だけど?」

「………ん?
 ……へぇ〜〜。つっちー好きな人いるんだ??」




 土屋はわざとらしく“一人だけ例外だけど?”の部分を、の方を向いて言った。

 その視線に気付いたは土屋に話しかけたのだが、

 はあの視線の意味は分かっていないようだった。


 それに土屋は落ち込み、周りの者達は“よっしゃーー!!”と叫んでいたそうな……。




































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あとがき

    26話デス。
    あんまヒロインちゃん出てこなかったような……?(ぇ
    ………まぁ気にしない気にしない(爽(ォイ



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