バレンタインデー





 朝、目が覚めるといつもの時間


 いつもと違っていた事といえば……

 昨日、たった一日の間だというのに私の携帯には大量のメールと電話がかかってきていた事。





   〜バレンタインデー〜





「あぁー、まだ眠いかも。………って何?このメールの数は」




 ベットの上に寝転がりながら、私は携帯を開いた。

 ディスプレイに写っていたのは“未読メール25件”という文字。



 いやいや!!あり得ないでしょう!!

 25件って………。



 んっと。

 隼人からが5件

 竜は2件

 啓太が6件

 浩介が8件

 つっちーからが4件


 ……………。

 どうしよう?

 みんな私が学校に行かなかったことを心配してくれてるっぽいなぁ。

 だってメールの内容ほとんどが「大丈夫?」とか「なんで学校来ないの?!」とか……


 
 ヤンクミに連絡するの忘れてたもんねぇ。

 ……やっぱりマズかったかな……?

 ていうか浩介の8件って凄いなぁ。……もしかして浩介って暇人?!



 そんな事を考えながらは起きあがり、学校へ向かうべく準備を始めた。

 今日はいつもとは違う特別な日。

 その為、いつもよりも荷物が多かった。




「うわっ!重っ!!………チョコってこんなに重かったけ……?」




 制服に着替えたは大きな紙袋を一つ持ち、いつも通り通学鞄も持つ。

 つまり両手に鞄と袋の両方を持つことになったわけで、

 この状態で転けたりなんかしたら大変なことになるだろう。




「………はぁ。……しょうがないっ!頑張ろう!!」




 そう決意して叫ぶの姿は誰が見ても怪しいこと限りなし。


 は両手に大きな荷物を抱え、慌てて家を出発した。




































「つっちぃー……」

「なんだよタケ」

はーー??」

「………わかんねぇ」




 場所は変わって3D教室。

 今日は2月14日ということもあってか、珍しくを除いた3D全員が登校してきていた。



 そこで机に突っ伏しながらいつもより低いテンションで土屋に話しかけたのは武田。

 話しかけられた方の土屋も扇子を仰ぎながら答えるが、

 いつものテンションよりは格段に低かった。



 そんな二人を横目で見ながらため息をついたのは日向だ。




「はぁ〜〜〜。……昨日はどうしたんかなぁ?」

「あ!!寝坊じゃね??

「……んなわけねぇだろ」




 日向の独り言を聞き、立ち上がって自信満々に言ったのは矢吹。

 そしてそれを否定したのは小田切だった。




「竜ー!!お前なぁ!!もうちょっと夢ってもんを……!!」

「そうだっ!日向の言う通り!!」

「………んなもんに夢持ってどうすんだよ」

「「「「…………」」」」




 結局小田切のツッコミに勝てる者はいないのだ。





 そこへ………





「おっはよう!!……って凄い!!みんないるっ?!」




 教室の扉を勢いよく開けたは驚きを隠せない表情でそこに立っていた。

 まぁ、当然と言えば当然だろう。



 普段だったらこんなに朝早くから全員が揃うなど考えられない。

 だが、今日は違っていた。

 3D全員がもうすでに登校してきていたのだから。




「……みんな何かあった?」




 心配そうな顔つきで問い掛けるにため息をつく者も少なくはなかった。

 そんな中、の抱えている紙袋に一番に気付いたのは武田だった。




「あぁーーー!!!!それ……」

「へ?あ、あぁ。これ?」

「うん。」

「昨日頑張って作ったんだー」

「まじで?!……だから昨日………?」

「うんー。ごめんね!メール来てたことに気付かなくって……」

「あ、全然!!気にしないでよっ!ね?」

「……ありがとね、啓太」

「おいおいおい!!そこっ!!なにいい感じのムード作っちゃってんの?!」




 と武田がいい感じになっているのを止めたのは……

 柄シャツがトレードマークの日向浩介。



 この時、密かに武田は頬を膨らませていた。



 日向はの手を引き、教室の中心部でもある場所へと連れて行った。





「はい!ではサン」

「……はい。なんでしょうか?日向サン」




 日向はを席へと連れて行くと、

 自分はと向かい合うように座った。



 会話がおかしいことに周りも当の本人達も気付いてはいたが、気にはしていなかった。




「………今日は本命の分は用意してあるのですか?」

「は?!え??な、なにを……?!」

「まぁまぁ。んなドモるなって」

「はぁ………。ってこれは何の事情聴取?」

「んんーー。なんでしょう?」




 ニコニコと話す日向。



 ちょうどその時、は思い出したように手をポンッと叩いた。




「あ!!朝一に渡そうと思ったのに!!」

「………なにを?」

「チョコ」

「「「「「「「まじでぇーーーー?!」」」」」」」

「そ、そんなに叫ばなくても……」




 そう言い、笑う

 は大きな紙袋を机の上に置いて一人一人に配り始めた。




「はい。大熊へー!」

「おぉ!サンキュ!!」

「んで、これは匠にっ!」

「まじで??うわっ!!あっりがとー」

「いえいえ〜〜。どういたしましてっ!」




 こんなペースではチョコを配り終えた。

 いつもの5人組を除いて……。




「なんで俺等が最後ー?」

「そうだよなー」

「つか何で最初が俺様じゃないわけ?」

「隼人……自分で“様”とかつけんなよ………」

「……………馬鹿だろ」

「竜てめっ!!」




 矢吹が小田切に殴りかかろうとした時。

 ちょうど良いタイミングでが近づいてきたのだ。




「よしっ!最後の5人!!」

「………なに気合い入れてんだよ」




 いつものように冷たく言い離した竜だが、微かに笑っていた。

 それを見ても微かに笑った。




「んじゃ!浩介ーー」

「おっしゃ!こん中では一番じゃん??」

「はいっ!ハッピー・バレンタイン!!」

「サンキューー!!」




 そう叫んでチョコの箱を掲げる日向。

 顔は嬉しすぎてニヤけてます状態だった。



 そんな中、異変に気づいたのはまたしても武田。




「あれ……?なんかみんなのと違くない?」

「あ、うん。5人は特別!!一緒にいる時間とか一番長かったし。」




 そう言って微笑むに武田は微かに頬を赤らめていた。

 矢吹は武田の隣で“うわっ。まじで嬉しいじゃんそれ”と小声で呟いていた。




「お次は、つっちー!!」

「おっ!二番手は俺か」

「……よく意味が分かんなかったけど。はいドーゾ」

「サンキュ!!」

「いえいえー」




 が土屋にミニチョコレートケーキの入った小さな箱を手渡すと、

 土屋は扇子を仰ぎながら高々と持ち上げ“やったぜーーー!!”と叫んでいた。


 その様子を、は嬉しそうに眺めながら袋からまた一つ小さな箱を取り出す。




「えぇと、これは啓太へ!」

「まじ?!やった!!ありがとねっ!!」




 武田は嬉しさのあまりに抱きついた。

 周りの者はそれを見てブーイングしていたのだが、武田は気にしなかった。




「まじで嬉しいっ!!」

「あははっ!そう言って貰えると私も嬉しいよ〜〜」




 そう言っても武田に抱きついた。

 武田はのその行動で我に返り、ゆっくりと後ろを振り返る。


 そこには………




「ほう。タケ、いい根性してるじゃん」

「あ、いや……これは………」

「タケちゃーん?なぁにしてるのかなぁ??」

「………う゛っ」

「後で顔かせ」

「こわっ!!」




 土屋、日向、矢吹は武田をから引き離すと

 じりじりと武田に歩み寄った。


 一方、武田は嫌な汗をかきながら少しずつ後ろに下がっていった。



 はと言うと、その様子を不思議そうに見ていたそうな。




「…………隼人ー?隼人はいらないの??」

「な?!いるに決まってんじゃん!」

「や。タケと遊んでたから……」










 “あれが遊んでいるように見えたのか?”





 クラス全員の考えが一致していた。

 そんな中、矢吹は急速にの元へ辿り着いた。




「はやっ!!」

「まぁな。で?俺には?」

「もっちろんあるよー!はいっ!!」

「おぉー!!サンキュ!」

「どういたしましてー」




 矢吹はから小さな箱を受け取ると

 に“これ開けていいよな?”と少しばかり強引に聞き、

 クラスの中で一番先に小さな箱を開けた。




「うわっ!うまそっ!!」

「見た目はね……」

「え?!なに、マズいの?!」

「えぇー……わかんない」




 他の人からのチョコではなく、

 本当に好きな人からチョコを貰えたことに感動している矢吹の問いには苦笑しながら答えた。


 そんなを見て、矢吹はミニケーキを頬張る。




「な、なんだこれは………!!」

「隼人サーン、なんかキャラ違いますよー」

「日向うるはい。ってマジうめぇんだってこれ!!」




 食べかけのミニケーキを見せながら、クラスの者にそう言う矢吹。

 それを見たクラスの男共は一斉に自分の箱を開け、食べ始める。


 もちろん、チョコやミニケーキを口に一言含んでからの第一声は




「「「「「「うっめぇーーーーーー!!!」」」」」」




 土屋に関しては“バリうめぇ!!”と叫んでいる始末。

 日向や武田は拳に力を入れながら“うめぇ……!”と呟いていた。





 そんなこんなで教室がざわついている中、

 は最後の一人。

 竜の元へ向かった。




「はい、竜!」

「………サンキュ」

「最後になっちゃってごめんねっ!!」

「別に。気にしてねぇ」

「そ?ありがとっ!竜、優しいからそう言ってくれるだろうなって思ってた!!」




 “だから最後は竜にしたんだー!”

 と笑いながら語るを見て竜の口元が緩む。




「これ……食っていいわけ?」

「ん?いいよ〜!みんな食べてるし。」




 は笑いながらそう言い、

 “マズかったら途中でやめてね”と付け足した。



 竜はゆっくりと小さな箱を開けると、ミニケーキを取り出した。

 その様子をじっと見つめる




「……なに見てんだよ」

「あ、ごめっ!……なんとなく竜が笑ってる気がしたからさー」

「笑ってねぇ」

「じゃぁ笑ってよ?」

「………は?」

「いいじゃん!たまには笑ってよ!!」

「……意味分かんねぇし」

「むぅ。じゃぁいいよー!タケに笑って貰うっ!!」




 は意味不明な事を竜に言い残して武田の元へ向かった。


 竜は“変な奴だよな”と独り言を小さく呟き、手に持っていたミニケーキを口に運んだ。

 その時にまた竜の口元が緩んだことを誰一人知る者はいなかった。




































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あとがき

    やったっ!!やっとバレンタインが終わった!笑
    二ヶ月遅れのバレンタインですが許してやって下さい!!(土下座

    書いてて楽しかった。
    そして竜が二回も笑って(?)くれた。笑
    隼人も感動してくれちゃいましたし!^^(なんか日本語が変
    タケは抱きついてくれましたし!
    つっちーと日向も大喜びっ!

    バレンタイン最高っ!!笑



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