気づかないふり





「昨日、喧嘩したんだってね……どっちが勝ったの…?」


 ヤンクミの言葉に私は驚いた。

 私の知らないうちに喧嘩なんかしてたんだ……。





   〜気づかないふり〜





「喧嘩………?」




 昨日、喧嘩したなんて……

 私は吃驚して聞き直してしまった。




「あぁ、A組の島田が荒高の奴等に絡まれててよー。助けてやったんだよ」


 

 つっちーと浩介が得意げに言う。

 まぁ、……喧嘩で活躍したのは隼人だと思うんだけど……。

 ま、いくら平和主義の私でも。理由があって喧嘩したから文句は言わない。

 別に私は喧嘩が嫌いってわけじゃないし。




「そうか……まぁ今回は理由があるみたいだから大目に見るけど。
 ……無茶はするな、退学になるかもしれないんだぞ」

「はっ、退学が恐くて喧嘩なんか出来っかよ。ま、どっかの腰抜けは別だけどね……
 男っつーのは……強くなきゃ意味無ぇんだよ!!」




 そう言って隼人は竜を睨みつけた。

 竜もその事に気がついたらしく、また2人は睨み合っていた。




 その時だった。

 ヤンクミが小さく笑った。




「強いって事は、喧嘩する事じゃないでしょ?……それに、喧嘩なら幼稚園児だってできるしね。」




 ヤンクミはそう言って授業を再開しようとした。

 その時、隼人が怒っていることにクラス全員がわかったと思う。



 隼人は教科書を取り出してヤンクミに投げようとしていた。




「ちょ、隼人!やめなよ……」

は黙ってろ」




 私が止めたのなんか気にせず、隼人は教科書をヤンクミに投げつけた。

 その教科書はヤンクミの横を抜けて床に落ちる。




「……物を粗末に扱うな」




 ヤンクミは教科書を拾うと隼人の所まで届けてくれた。

 その後ヤンクミが戻ろうとしたとき、隼人音を立てて立ち上がる。

 クラスに緊張が走った。




「今日4時、川原に来いよ」

「デートの誘いにしちゃ、随分だな」

「誘ってねぇよ」

「なんのために?」

「俺とタイマンはれ」

「タイマン?」

「もしお前が勝ったら、俺が何でも言う事聞いてやるよ。
 俺が勝ったら……もう俺達に指図すんな。
 それが弱い者と強い者のルールだろ」




 ………やっば。

 タイマンって……


 隼人の目は本気だ。

 本気でヤンクミとタイマンする気らしい……。



 隼人が出ていった後の教室はいつも以上にざわついていた。



































 私は授業が終わった後、ヤンクミに聞きたいことがあって職員室に向かう。




「失礼します。……ヤンクミ…じゃなくて山口先生はいらっしゃいますか?」

「ん?……じゃないか、どうした?」




 あんまり聞いた意味はなかったみたい……。

 ヤンクミは私の目の前にいた。


 教頭とかは驚いたようにこっちを見ていたけど、そんなの気にしていたらキリがないから無視した。




「ねぇ……。本当に隼人とタイマンはる気?」

「………んなわけないに決まってるだろ!!」

「本当………?」

「あぁ、あたしは一応先生だ。生徒相手に本気出さないよ」

「……ってことはタイマンはる気なんじゃない!」

「あ、いや、
 そういう意味じゃなくてだな。もし“どうしてもタイマンしなきゃいけないときは…”って事だ!!」

「……まぁ、しょうがないか…。隼人は話で解決するような人じゃないしね」




 自然にため息が出てきた。


 なんでだろう? 

 全然心配とかしてない自分がいる。
 
 やっぱりヤンクミだからかな……。


 私が大人の中で信用できるのはヤンクミだけかもしれない。




「じゃ、4時に会おうね!!」

「おぅ!!」

「ばいばぁーーい」




 私はそのままヤンクミに手を振って職員室から出ていった。



































 4時。

 いや、4時ちょっと過ぎかな。


 まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど。

 3Dのみんなは川原に集まっていた。

 これはあの……あれみたいだよね……あのーー




「プロレス観戦!!!」

「いや、違うだろ」




 自分の言いたかった言葉が見つかって言ってみたら

 つっちーに突っ込まれた。




「ぬぅーーーーー」

「なに唸ってんの?

「あ、啓太ーーー」

「どうしたの?」

「つっちーがいじめる」

「いじめてねぇよ」

「……この身長差がいじめなのよーー!!」

「「「意味わかんねぇよ」」」




 は意味の分からない事を言ってみんなから盛大なツッコミ(?)を受けた。

 はそんな事は気にせずに“ヤンクミ早く来ないかなぁ”とか言いながら立ち上がり、

 周りを見渡す。


 すると達のいる場所の少し上の道に竜の姿を見つけ、走って向かった。




「竜!!」

「……なんでこっち来んだよ」

「えぇ?!来ちゃいけなかったの?!」

「いや、……そういう意味じゃねぇけど」




 そう言いながら竜はため息をついた。

 その様子を見ては笑いながら一言言った。




「竜……ため息ついてると幸せ逃げるよ?」

「………誰のせいだよ」

「へ?なに?」

「別に……」




 私はその時気づいた。

 ヤンクミが私がさっきまで居たところの近くにに座っていたことに。




「あんなところにいたんだぁ」




 ヤンクミは隼人に何か言われたらしく、隼人の前まで歩いていく。

 隼人はやる気満々で上着を脱ぎ捨てた。

 それに挑発されたらしいヤンクミも上着を脱ぎ捨てた。




「さむっ」




 ヤンクミはそう言いながらさっき脱ぎ捨てたばっかの上着をもう一度着た。




「あははっヤンクミらしいーーー!!」

「なに笑ってんだよ」

「だって……あははははっ」

「馬鹿か」




 ヤンクミが上着を着たことでみんなは転けていた。




「あ。竜!!」

「今度はなんだよ?」

「ヤンクミが……逃げた!!」

「は?」

「ほらっ!!警察から……」

「なんでセンコーが察から逃げんだよ……」




 見ていると隼人達も慌てて逃げていた。




「早く追いかけないとっ!!」




 そう言いながら私は竜の手を引っ張る。

 ヤンクミと隼人を見失わないように!!



































「いいか矢吹………お前は確かに喧嘩は強いかもしれない。
 でもな、喧嘩に強いって事が男として…………人として強いって事じゃないだろ?」




 私達が隼人達を見つけたとき。


 隼人はヤンクミに殴りかかっていて、かわされていた。




「人の強さなんてもんは、……力の強さで決まるもんじゃない」




 ヤンクミの言うとおりだよ、隼人……

 隼人も竜も啓太もつっちーも浩介も……

 みんな強いんだよ

 心に1つの芯を持ってるから……

 みんな十分強いんだよ




「まだやりたいのか?」

「うるせぇよ!」




 隼人は先生が嫌いだから負けたくないんだと思う

 私も先生が嫌いだったからその気持ちは分かるよ……



 先生なんて……大人なんて……

 理由なんて聞かずに頭ごなしに怒鳴りつけて…

 私達の事なんて少しも信じてくれない……



 でもね、隼人……ヤンクミは違うよ?

 ヤンクミは他の先生達とは違う……



 私はヤンクミに教えて貰ったことが沢山ある……

 ヤンクミがいなかったら私は学校に来なかった

 ヤンクミがいなかったら私は多分、今ここにいなかったと思う



 だから……あんまり無茶しないで……お願い




「……ここまで言っても聞かねぇなら仕方ねぇな」




 その時、ヤンクミの拳が隼人の鳩尾に入る。

 隼人はその場に倒れ込んだ。




「いいか、矢吹。
 世の中にはお前より喧嘩が強い奴なんて沢山いるんだ。
 そんなもんで強さを争っても何の意味もねぇんだよ!
 人には……自分にとって大切な物を守る力だけあればそれで良いんだ。
 その方法はいくらでもあるはずだ………。それじゃ、また明日学校でな」




 ヤンクミはそう言い残して去っていった。

 横にいたはずの竜もいつも間にかいなくなっていた。



































「隼人……」

……?………なんでいんだよ」

「……ごめん」




 目の前がいきなり暗くなったから顔を上げてみるとそこにはがいた。

 
 しばらく突っ立ってたかと思ったらいきなり俺にハンカチを渡してきた。

 ……俺はそれを受け取って、血の出た場所をおさえておく。




「格好悪いな………俺」

「ううん……すっごい格好良かったよ」




 真剣に向かっていく隼人の姿はもの凄く格好良かった。




「はっ」

「嘘じゃないからね!!」

「………サンキュ」

「どういたしまして!」




 はすっげぇ笑顔でこっちを見ていた。

 ………そんな顔でこっち見んなよな……。

 抱きしめたくなっちまうだろうが……



































 別に今まで気づかなかったわけじゃない

 ただ、柄にもねぇな

 って思って気づかない振りをしてたんだよ。


 俺は、お前が好きだ……


 だから本当は見られたくなかったんだよな……

 センコーなんかに負けるところなんかよ

 でも、それでもお前は俺のことを格好いいって言った。

 ……てことは、俺にも可能性があるって事だよな?



































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あとがき

    うん?何がしたかったんだろう……私。
    ま、まぁとりあえずドラマ2話目の前半終了ってところですかね!
    隼人……君は格好いいよっ!!
    頑張っていきましょーー!!おーー!(何



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