何者?




 あの新しいセンコー

 もう来ないかと思ったのに以外だねぇ

 ………結構根性あるんじゃん?




   〜何者?〜




「“xの二乗=ー5”の時、Xの値は…………」




 そう言いながら昨日来たセンコーは

 黒板に数学の中学校レベルの問題を書いていく。




「えぇーー。この問題解る人ーー」




 誰も聞かないっつーの。

 あ。私はちょっと聞いてるか……

 答える気なんてサラサラないけど。




「誰も分かんないの?……ねぇみんな聞いてる?聞いてますかーー?聞こえてますかーー?
 ……“聞いてんのか?”って言ってんだろ!!人が話してるときは相手の顔を見る!お前等そんな常識も知らねぇのか?!」




 とうとうセンコーもキレたみたいだね。

 てかこのメンツ相手にキレるって凄いじゃん?

 他のセンコーなんか無視されてるの気にせず一人でしゃべってる奴ばっかだし。




「はいはーい!私、聞いてまーーす」

「?!」




 私が手を挙げて答えてあげたら、

 あのセンコーは首折れるんじゃない?ってくらいの勢いでこっちを向いた。


 あぁー。………ま、驚くのも無理ないか




な、なんで女の子がここにいるんだっ?!

「………別に。気にしなくて良いから」




 は背伸びと欠伸を一緒にしながら

 久美子の質問に自分なりの答えを出した。

 その際、周りからは“もうちょっとおしとやかに欠伸しろー”との意味の分からない言葉が飛び交っていた。




「いや、気にするなって言われてもだな……」

「気にするなっつってんじゃん。私しつこい人嫌ーーい」

「な?!しつこい?!」




 久美子が慌てたようにに聞き返すと、

 の目つきは変わり、久美子を睨みつけながら言った。

 “しつこい”という言葉に久美子は少しショックだったようだが、

 周りからは“ヒューヒュー”“格好いいー”“俺もしつこい人嫌ぁい”などと、

 久美子を馬鹿にしたような言葉が教室の中を飛び交っている。




「そ。しつこいのっ!ね?慎」

「……………」

「ん?慎君おねむですかーー??」

「うっせ」

「あははっ!ごめんごめん怒んないでよ」




 ふざけて慎と話しているを久美子は呆然と見ていた。

 その時、急に沢田が立ち上がり教室から出ていこうとした。




、行くぞ」

「んーー。」

「俺等も行くーー!!」

「行こ行こっ!!」




 沢田に続いて、野田、内山、熊井、南までもが

 授業中にも関わらず教室から出ていった。




「ちょ、待ちなさいよ!!……えぇと、沢田君」




 久美子は生徒を追って教室の前の廊下まで来ると、

 名前を確認しながら沢田を呼び止めた。

 が、当の沢田は何も言わずにその場に止まり、自分の手首にはまっている時計を指差した。


















 ――――キーーンコーーーン

      ―――――――カーーンコーーン


















「チャイムぴったしっ!!流石慎」



































「校長!!」




 場所は変わって職員室。

 久美子は授業を終えると、走って職員室に直行した。

 そして勢いよく職員室のドアを開けると校長を呼んだ。




「あ。山口先生どうかしたんですか?」

「どうしたもこうしたもないですよ!!なんなんですか?!あの女子生徒は?」

「おや、もうさんには会ったんですか?」

「“おや”って校長………」




 早口で喋る久美子とは正反対に、

 校長はゆっくりと落ち着いて話していた。

 そんな校長を見て久美子はガクッと肩を落とす。




さんの事はいいんですよ」




 校長はいつものように職員室にあるサボテンに水をあげながら久美子に話す。

 もちろん、周りの先生方も聞いている。




「いいって………?」

「いいものはいいんです!!」

「きょ、教頭?!」




 久美子は校長に向かって聞き返したのだが、

 答えてきたのはリーゼントがトレードマークの猿渡教頭。




「あいつは何を言っても聞きません!放っておくのが一番です!!」

「そんなこと……」

「あいつは女の癖に喧嘩はしますし、今通っている学校でも先生に逆らったとかで謹慎処分を言い渡されているんです!!」

「……なら尚更学校に行かせるべきではないんですか?」

「…………向こうの先生方からお願いされてるんですよ」

「なにをです?」

「“を学校に来させるな。問題児は白金で扱ってくれ”とね……」

「なっ?!」




 教頭が話の一区切りまで話した。

 当然、その話に久美子は驚く。

 だが、そんな久美子に気を遣うことなく教頭は話を続けた。




「まったく……。校長も校長ですよ!なんでそんな頼みを引き受けたりしたんです?!」

「実は……その高校の校長先生には金銭的にいろいろとお世話になっていまして………」




 教頭の問い掛けに校長は苦笑しながら答える。

 周りの先生方もそんな話は初めて聞いたようで、いつも以上に驚いていた。




「まぁ、山口先生」

「は、はい?!教頭」

「そういう事ですので、は放っておくように!!」

「………そういう事ってどゆこと?



































 私達は学校の授業も終わって今は遊んでる。

 ま、授業っつっても誰も聞いてないから授業って言えるか分かんないものだけどね。


 あ。ちなみに今遊んでるのは野球の球投げ。

 なんていうゲームか忘れちゃったんだよね。




「慎ーー!いっけー、変化球ーーー!!」




 慎がボールを投げてその速度が掲示板みたいなやつに表された。


 【125】




「おぉーー!!慎、凄いじゃん!!」

「……当たり前だろ」

「言うねぇ」




 みんなと遊ぶのはかなり楽しい。

 学校にいるあの表面上だけの友達とは違うから。


 あいつらはいつも人のご機嫌取ったり、影で悪口言ったり……

 そんな奴等といてもぜんっぜん楽しくも何ともない。


 でも白金3Dのみんなはそんな事しない。

 てか、してたら気持ち悪い………

 想像しただけでも吐きそうだ。




「ん?どしたの?」

「あ、いや?なんでもないよーん!ありがとね、うっちー」

「お?……おぉ」




 うっちーは優しいんだよねぇ。

 もちろんみんな優しいけど。

 うっちーはなんかこう……異変に気付くのが早いって言うのかなぁ?

 ま、とにかく優しい人だよ。うっちーは!



































 その後は暗くなるまで遊んだ。

 まぁ、いっつもこんな感じ。

 暗くなるまでみんなで遊んでる。

 …………てか、遊びすぎて気付いたら暗くなってるって言った方がいいか。




「じゃな」

「あ。慎帰るのー?」

「あぁ。……お前も帰るか?」




 慎が帰るって言い出したから、

 私も帰ろうかなぁって思う。

 慎と私ハアパート暮らし。しかも同じアパートでお隣さん。




「うんっ!お隣さんだし♪」

「うわっ!慎ずりーー」

「うっせぇよ」




 いつものようにみんなで馬鹿騒ぎして

 暗くなってきたら帰る。


 こんな日常が凄い楽しかった。



 でも、私が嫌なのはここから……

 私はハッキリ言って親が嫌い。

 いろいろ口うるさく言ってきて、私の話なんか聞こうともしないから。


 だから私は家を出た。

 親はなんか止めようとしてたけど、止められなかったみたい。

 今もたまに電話とか来てるけどそんなに気にしない。




「じゃ!!みんな明日会おうねーー」




 私がそういいながらみんなに手を振ったら、

 南、うっちー、熊、野田は“おぅ!”とか“待ってるぜー”とか言ってくれた。

 そんなちょっとしたことが嬉しいんだよねぇ。




「行くぞ、

「え?慎……あぁ、うん」




 慎は私の手を取って歩いてく。


 ……慎の歩幅が大きいから

 私が歩くのが大変だと早く気付いて欲しいものだ……。




































 今は学校の屋上。

 ラーンチターーイム!!


 あ、なんか熊達にパシリにされてた奴が戻ってきたみたい。




「お疲れっ!!」

「……あのー。一人500円だったんだけど……」




 パシリにされてた奴は恐る恐るといった感じで

 かかったお金を請求していた。

 まぁ、当然よね……




「てめぇ!弁当代取ろうってのかよ!!」

「この間北高の連中に絡まれてたの助けてあげたのは誰だったかなぁ?!」

「恩人から金取っちゃだーめよ?なぁ?!」

「義理と人情忘れちゃまずいんじゃないのぉ?!」




 上から熊、うっちー、南、野田。

 ……かわいそー。パシリにされたうえにお金もらえないなんて。

 4人も払ってあげればいいのに。

 ………まぁ、私も4人を止めようとも思わないから五分五分だろうけど。




「………あ。お、思い出しました。義理と人情」

「「「「だろ?」」」」




 義理と人情を思い出したってどういう現象だよ。




「………ねねっ!しーん」

「……なに?




 私が、暇そうにベンチに寝ている慎に話しかけたら

 慎はため息を付きながら返事してくれた。




「……なんでため息つくのよ?」

「別に」

「ま、いっか!んでさ!!止めなくていいわけ?」

「なにを?」

「あの4人に決まってるでしょ?」

「別に。いんじゃね?」

「そ。ならいいや」




 私には関係ないし。

 だって毎朝自分のお弁当くらい作ってるもの。


 早速お弁当を食べようとしてふたを開けた。

 その時。




「あのさ!」




 あの山口久美子とか言うセンコーが来た。

 ……なにしに来たんだか。




「なぁに?」




 みんな無視すんのかなぁって思ってたけどそんなことも無いらしい。

 野田はさっき貰った?コンビニ弁当のふたをバリッと音を立てながらも答えてる。




「実はさ、教頭の保管してたお金が無くなっちゃったのね。それでさ………」

「いっただっきまーす!」

「あぁ?!なんでご飯にゴマなんだよ?!」

「ゴマは体にいいんだよ?南」

、お前主婦みてーー」

「嬉しくないわ」




 ちゃんとセンコーの話を聞くのかと思ったらそうでもないらしい。

 答えたのは最初だけで、今は誰も話なんか聞いてなかった。




「だから……それで………」




 センコーがそこまで言ったとき、

 珍しい?ことに慎が起きあがってきた。

 いつもならこの時間は寝てるのにね。




「あんたさぁ」




 慎はあのセンコーに何か言おうとしてるらしい。

 だんだんと近づいてくる。




「俺達のこと、疑ってんだろ?」

「あぁ、そゆこと」

「わかんなかったのか?

「うんー。てか話聞いてなかったし?




 “あははっ”って笑ったら

 慎は呆れたようにこっちを見ていた。


 センコーは一瞬出遅れて慎の言葉に反応した。




「へ?あ、いや。いや、別にそういうわけじゃ……」




 慎の真っ直ぐな目。

 ……なに考えてるのかはわかんないけど、なんか圧倒するものがある。




「……知らないよね!みんな何も」

「知らねぇよ!」

「あんた達じゃなくて、誰か他の……」

「知らねぇって言ってんだろ!!」




 熊がキレたみたい。

 センコーに殴りかかろうとしてたけど慎に止められた。

 で、その後は慎がまたセンコーに話してた。



 あ。我ながら今日の卵焼きはうまく焼けた……



 私はパクパクと自分のお弁当の中身を食べながら横目で様子を見ていた。




「……例え知ってたとしても、ダチを売るような真似はしない」

「そっか……悪かったね、疑ったりして………」




 あのセンコーはなんか分かんないけどいきなり笑顔になってそう言った。

 ……3Dにも意味分かんないのが来たなぁ〜


 で、センコーは帰ろうとした。

 けど、何かを思い出したようにその場で止まった。




「あ。一人500円。彼に渡しとくから」

「ちっ、なんだとてめぇ!!」

「南ー。お弁当投げないの」




 投げるとおかずがこっちに飛んでくるんだよね。

 全く、勘弁して欲しい。


 相変わらずに私がパクパクと食を進めているうちに話しは進んでるっぽい。




「パシリの手数料も上乗せしてもいいところだけど、まぁ、それは彼にも借りがあったってことだからチャラって事で500円」




 その言葉に慎と私以外が立ち上がって

 あのセンコーにつっかかってく。


 みんなせめてご飯食べてからやりゃいいのにねぇ……




「おい!なめんなよ……」

「500円」




 うっちーが最初に言ったんだけど、センコーは怯む様子が全くない。

 ……確か最初の熊の時もそうだったなぁー。




 何者なの?このセンコー




 そんな事を思ってるとき、

 地面にお金が落ちる音が響いた。

 どうも、うっちーが500円出したらしい。

 ……珍しいねぇ。あのうっちーがセンコーの言うこと聞くなんてさ。




「………親が稼いだ金を投げるんじゃねぇよ!!




 正直、吃驚した。

 何事かと思ったもん。

 見てみたら、みんなも結構驚いてたみたい。

 あの慎でさえも目を見開いてた。



 あのセンコー………まじで何者?




「ま、素直に出しただけ良しとするか。ほらっ!お前等も」




 そう言いながらセンコーはお金を拾った。

 拾うと、みんなの前に手を出して500円を請求した。


 みんなは渋々といった感じだったが、お金を取り出してセンコーに渡してた。



































「慎」

「……なに?

「あのセンコー何者なわけ?」

「…………さぁな」

「……………………」



































 みんなに聞こえないように私は慎に話しかけた。


























 きっと慎も私と同じ事を考えてたと思うから………



























 あのセンコーは他のセンコーとは何かが違う…………




























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あとがき

    2話目ですっ!
    もしかしたらどの台詞が誰の台詞かわかんないって方がいると思うので、
    なるべく誰が喋ってるか分かるようにこまめに説明入れてみました(笑



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